最近話題になることが多いイスラム教。イスラム…と聞くと私が思い
出す人物の一人がブラック・ムスリムの指導者マルコムX。デンゼル・
ワシントンが主演した映画では「本人に似てる!」と思った人も多い
のでは?
同じ時代を生きた指導者マーチン・ルーサー・キングは、アフロアメ
リカンとしては初めて、誕生日(1月の第3月曜日)が国家の祝日と
して祝われているのに対して、マルコムXは、あまりにも過激だった
ためか歴史の表舞台からちょっと隠れているような印象があるけれど
も、キング牧師と同じくらい黒人の公民権運動に影響を与えた人物。
彼のもとの名はマルコム・リトル。けれど、この「リトル」というフ
ァミリーネームは奴隷時代に白人から強制的に押しつけられた名前で
あり、本当の祖先の名前はわからないという意味で「X」と名乗った
らしいのです。(Xは ex つまり「以前の」という意味だという解釈
もありますが)
そもそも18世紀に、イギリスが貿易「商品」としてアフリカから大
量の奴隷を西インド諸島に持ち込んだ結果、北アメリカ大陸に多くの
アフリカ人が送り込まれることになりました。子供の頃にアフリカの
地図を見てカタカナの地名に混じって「奴隷海岸」という名前がある
のに戸惑ったのは私だけではないと思います。
彼ら黒人は本名を名乗ることを許されず、物の名前や地名、または所
有者の好みで名前を付けられたといいます。または、あだ名がそのま
ま名前になることも。奴隷解放後も主人の姓をもらうことが多かった
ようです。
ちなみに、マルコムX自身にインタビューし、「マルコムX自伝」の
共著者となっているのは、自らの祖先の系譜をたどった大ベストセラ
ー小説「ルーツ」の作者アレックス・ヘイリーです。このテレビ放送
によって日本に「ルーツ」という言葉が定着しましたよね。
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■■ 「ウサマ・ビン・ラディン」ってどういう意味?
イスラムつながりで、今話題の人物ウサマ・ビン・ラディン氏の名前
について。
そもそもアラブ諸国には、鈴木や佐藤といったファミリーネームが無
い代わりに父系の系譜を名乗り、父親だけでなく祖父・曾祖父とどん
どん連ねていくことを誇りとしているそうです。
この「ビン」は「息子」を表し、「ラディン」が父親の名前になりま
すから「ラディンの息子ウサマ」という意味なのです。
(彼の場合は「ビン」ですが、「イブン」「ブン」と表されることも
あります。)
英語では Osama bin Laden と bin が小文字で表記されています。
日本のように「ビンラディン氏」という呼び方はちょっと不都合があ
るかもしれません。彼には50人もの兄弟姉妹がいるそうですから。